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 ”銘酒市川 店主市川祐一郎”の「晩ごはん」が楽しみ

【その3 海の幸の宝庫 蒲原 秋は「ぬる燗」】
静岡新聞社 しずおかのビジネス情報誌 「Vega」 2003 VOL73 掲載
 私の楽しみはなんといっても、家族みんなでワイワイと食べる「晩ごはん」。店舗兼住宅の小さな酒屋を営んでいるため、1日の大半はお店にいる。だから夕方、母か家内が台所に立って、夕げの支度を始めるのが分かる。コトコト聞こえてきだすと、もううれしくなってくる。台所から出てきたところをつかまえて、「今日のおかずはなあに?」と聞く。

 「なになに今日のおかずは鰹の刺身!」お昼前、大漁だったからと知人から”お裾分け”をいただいたのだそうだ。漁の最中、偶然、鰹の大群を見つけ、無線で仲間を呼び合い一網打尽にしたのだという代物だそうな。さてさてご相伴にあずかりましょうか。まずは定番の「お刺身」。生姜醤油でいただく。「あーうまい!」口中でもちもちっと粘るカツオならではの感覚に合うお酒はなんといっても日本酒の”ぬる燗”に限る。お刺身との相性は抜群だ!もう最高!涙がちょちょ切れそうだ。

 お次は鰹の切り身を生野菜といっしょにポン酢醤油で「カルパッチョ風」でいただく。今度のお酒は赤ワインだ。これもバッチリ合う。うれしいねえ。以前、ソムリエの田崎真也氏がTVで「赤い色の料理には赤ワイン。白い色の料理には白ワイン。簡単なことですが案外当たっているんです」と言っていたことをいつも思い出す。

 酔った勢いで家内に「オリーブオイルを少し絡めた方がウマイかもしれない」と作ってくださるご苦労も忘れ、余計なことを言ってしまった。ご機嫌を損ねたらマズいかなと思ったが、「今度そうしてやってみるね」というありがたいお答えをいただき内心「ホッと」!

 そういえば先だっては鯖もいただいた。由比の定置網にいい鯖がわんさかと入ったとのことだった。さっそく家内が「鯖の竜田揚」を、母が「〆鯖」をこしらえてくれた。まずは熱々の竜田揚を冷たいビールで!うまいんだなこれが。カリカリッとした醤油味が香ばしくてイケル!のだ。さっきまで子ども達も”ばっちらえ”で食べていたそうである。我が家の”定番”にするよう家内に今度は丁重にお願いをした。

 喉をしっかりとビールで湿したあとは〆鯖をぬる燗で。日本酒の米の旨味が〆鯖の上品な酸味と相まみてれ絡まってそれはそれは、おいしゅうございます。そこへ近くにいるの従兄弟が寄ったものだから、もう大宴会!(二人だけだが)試飲中の日本酒の四合瓶をあっという間に二本空けてしまった。翌朝どうなったかはご想像の通り。

 「生シラス」もよくいただくのだが、そのたびに一つ悲劇が生ずる・・・。”鮮度が命の生シラス”ゆえ、”ピンピン”の状態はいいとこお昼くらいまで。よってお昼ごはんにしか本当の生シラスは食することができないのである。それを肴に「一杯やれない!」ということが悲しいのである・・・。だから私は、お昼には「生シラス」は決して食べないと心に決めている。ご飯だけではなんだかもったいないくてたまらないのだ。海の神様に申しわけないのである。

 この憧れの「生シラス」、業務用はいざ知らず、家庭用でもなんとか晩ごはんまで保たす方法を考案していただき、憧れの「生シラス」で一献するのがささやかな願いである。なんといっても生シラスには、これまた日本酒が合う。それもお燗。生シラスのダイナミックな自然そのものの飾らない野性味がお燗とピッタリ合う。生シラスは大自然のご馳走なのである。駿河湾さんありがとう!

 余談だが、お昼に食べきれなかった生シラスは「ゆでシラス」に変身する。この「ゆでシラス」のおいしい作り方をその道の達人から聞いたのでご披露しよう。まず、大きめの鍋にザルをいれて、たっぷりのお湯(海水に近い塩分濃度)を沸騰させ、その中に少し生シラスを入れる(いっぺんにドバッといれてはいけない。あくまでも小分けでの作業がポイント)。シラスがゆであがって上にふわふわっと浮いてきたら、すぐさま全部揚げる。すかさず、扇風機で風を当て急冷する。そうするとしゃんとしたおいしいゆでシラスになるそうだ。私も今度やってみようっと!

さて明日のおかずは何かなあ?


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