1. 銘酒市川 1999年 連載企画『銘酒市川 お酒の便り』

お酒をおいしく飲むのには


1999年 連載企画『銘酒市川 お酒の便り』より

1. ヘンな話し・・・DSはお酒が高い?
 「DS」って”ディスカウント・ストア”の意味ですよね。本来はお安い価格で勝負!という世界です。
 ところが全国いたるところののDSで新潟の有名銘柄「越乃寒梅」が1万いくらかで売られております。このお酒は本当にすばらしいお酒です。実においしい凄いお酒です。私も大好きです。
 でもこのお酒、本当の価格はせいぜい2,400~2,500円なんです。なぜ1万円とかそんなに高くなるのかというと、流通に問題がありDSは正規の流通ではない酒ブローカーから仕入れているからです。人から人へとお酒が渡り、価格が上がっていくんです。
 ああいうお酒があるからこそDSは利益を上げられるんです。でも、高く売られている最大の原因は、■高い値段で買うお客さんがいるからなんですよ■。★みなさん、そんな高いお酒、喜んで買うのはやめましょう!★ このマガジンをご購読の皆様はそんなことはないと存じますが。
 ひと昔前に”横断歩道みんなで渡れば怖くない”というのがありましたが、これになぞらえて”バカ高の酒、みんなが買わなきゃ安くなる”をみんなで実行に移しませんか。
2. 飲み屋さんの見分け方
 お酒が旨くて、料理も旨い。サービス良くて、雰囲気良し。そして、値段もお手頃!こんなお店は最高ですね。こんなお店が近くにあったら、それこそあなたは幸せ者です。
さて、いい飲み屋さんの見分け方をお教えいたしましょう。くれぐれもこれは一酒屋として感じていることですので・・・。
★いいお店は入った瞬間にわかります!
 なぜならお店の空気が違います。また、お店に活気があること。ご主人がやさしくて、お酒と料理に情熱をもって取り組んでいること。
★日本酒の旨いお店は間違いなく料理もうまい!
 これはまず、間違いありません!料理は旨いが日本酒はイマイチ、もっとお酒に気を遣ってほしいなあっていうお店が多いのには飲んべえとしてはガッカリします。ちょっと前にこんなことがありました。とある都市のカウンター割烹。創作料理が売り物のお店。知人が「そこいいよ」というので、機会を見つけて行ってきました。料理はなるほどおいしい。寒かったのでお燗を頼みました。するとカウンター越しにおかみさんがパック入りのお酒を徳利にドボドボ。DSで大安売りのお酒です。たしかK正宗でした。一気に興ざめ。酔いざめ。せめて見えないところでいれてくれよー。 
3. おいしいお燗のつけ方
■ お燗のおいしいつけ方
 大きめの鍋ややかんのような器(銅壺がベスト)にたっぷりのお湯を沸かします。(お湯は熱すぎてもいけません。)それに徳利ごとドボンと入れます。火は弱火で。まわりからゆっくり温めるのがポイント。急激に熱してはいけません。(熱湯に入れると温度が均一でなくなるからです。)
■電子レンジはお燗の強ーい味方
 ガラスの容器にお酒を入れて約1分30秒ほどにセットしてチンします。それを別の徳利に移して飲むといいお燗についています。電子レンジは熱で燗するのではないので、均等にお酒が温まるのです。電子レンジはお燗の名人です。
■「ぬる燗」のフィーリング
 約40度くらい。温度計で計ってみて、そのカンをつかもう!
■「人肌」のフィーリング
 たとえばお風呂に入って、ちょっとぬるいなあと感じるそのお湯を口に含んでみます。その感じです。
■「熱燗」のフィーリング
 個人個人感じるものが違うのでひとことでいうのはむずかしいです。 人それぞれの好みです。         
4. おいしいお酒と出会う方法
★お酒を選ぶ前にまず酒屋さんを選ぼう!
 熱心に取り組んでいる酒屋さんは行けばわかります。その酒屋さんの情熱が必ず伝わってきます。常時試飲をさせてくれるお店はさらにベター。試飲して気に入ったお酒は自分自身納得して飲めます。
★熱心な酒屋さんが「これはうまいよ」と推奨しているお酒は まず、間違いない!
★次回その酒屋さんに行ったとき、酒屋さんに「この前買ったお酒 おいしかった」など感想を話そう!
 酒屋さんは自分が勧めたお酒がお客様から「おいしかった」と言われることはもう最高にうれしいものです。これこそ酒屋冥利に尽きます。うれしくなって「実はねえー」といって、奥の冷蔵庫からとっておきの秘密のお酒を出してきてくれるかも。(わたしならそうしちゃいます!)        
5. お酒をおいしく飲むために(その1)
★大切なポイントはお酒の保存の仕方です。
 お酒は女性といっしょで非常にデリケートです。保存の仕方を間違えるとせっかくのおいしい日本酒が台無しになってしまいます。封を開けなければいい、というのはちょっと考えものです。
<本醸造・純米酒> 日が当たらず、温度が高くならない冷暗所に保管。台所の流しの下や床下がベター。冷蔵庫のスペースが空いていたらそこがベスト。
<吟醸酒> 寒い冬には上記のような冷暗所に。それ以外の季節は冷蔵庫へ。奥様にお願いしてください。"Give me space!"
<生酒> 必ず冷蔵庫でお願いします。
★質の良いお酒を飲みましょう。
 そういうお酒をしこたま飲んでも、翌朝はわりと平気です。これは真実です。
★言い忘れておりました。お酒をおいしく飲むためには何と言っても、すばらしい友達・仲間と飲むことですね。そんなお酒は最高です!それと、すてきな奥様・旦那様、彼女・彼氏と飲むお酒・・・・。 
6. お酒をおいしく飲むために(その2)
★大切なポイントはお酒をのむタイミングです。
 お酒は赤ちゃんといっしょで非常に敏感で瞬時にしてその表情を変えます。
 冷蔵庫から取り出してすぐ注いで飲むというのは、あまりおすすめできません。冷やしすぎると、そのお酒が持っている本来の味・香りなどが冷たさに隠れてしまうからです。
ですから、冷蔵庫から出したら少しそのままにして、時間をおいてから「さあお待たせ!やっと飲めるぞ!」くらいの気持ちの余裕をもって飲んでみてください。室温くらいに戻ったころが味や香りがフワーっと出てきます。
 でもこれも人それぞれのここが旨いんだなあという温度ポイントをお持ちだとと思います。お酒は楽しく飲めれば堅苦しい決まりなど気にすることはありません。上記のことはあくまでも参考までに、みなさんそれぞれお気に入りの温度ポイントでお酒を楽しみください。
★利き酒は15度を基準に。
 お酒本来の味が一番わかりやすい温度です。利き酒は本醸造なら本醸造、大吟醸なら大吟醸と範疇別に。
★利き酒のポイント・・・一杯目では口を洗います。二杯目で本当の”利き”をします。   
7. お酒をおいしく飲むために(その3) お酒に感謝!
★酒の十徳★
一、礼を正しうし 二、労を慰め 三、愁を忘れ 四、鬱を開き
五、気を散らし  六、毒を消し  七、病を防ぎ  八、人と親しみ
九、縁を結び   十、人寿を延ぶる
 現代語に訳しますと「日本酒を飲めば、血の循環がよくなり、筋肉のコリがほぐれて疲れがとれ、ストレスがなくなりリフレッシュでき、食欲を増進させ、深い眠りを促し、病気の予防になる。また、酒を酌み交わせばすぐに人と打ち解け、親しくおつき合いすることができる。このように人間関係をより円滑にし、長寿をももたらす。
★健康増進には「ほろ酔い気分」で!
 ほろ酔いの状態で飲み終えるのが、心身のリフレッシュに最適です。
★飲むときは「お水」をお酒のおとなりに。(きれいな女性もいいですが)
★最後に、飲み過ぎさえしなければ、お酒はむしろ薬です。
 でもガンガン飲んでストレス発散もたまにはいいんじゃないですか?本当においしいお酒を、ゆっくりじっくり時間をかけて味わえば、きっと深い満足感が得られるはずです。 
8. お酒を楽しんでいただくために必要なこと
★お酒のラベルをチェックしよう!
 ラベルの原材料名のところに米・米こうじ・醸造アルコール以外に糖類・酸味料等の表示が書かれていたら要注意!これらのお酒は本来の日本酒ではありません。糖類・酸味料等はいわゆる味の素といっしょのモノと考えてください。それで味を作っているのです。だまされないようにね。体にいいわきゃありません。
 たぶんそのようなお酒は大安売りで売られていると思います。定価○○○円のところ特価△△△円というふうに。定価○○○円とうたっておりますがそのお酒の本当の価格は特価の△△△円の方なのです。安くて当たり前なのです。そういうように作っているのですから。当然、体にはいいはずはありません。味の素を飲むと同じことなので。なるべくこういうお酒を飲むのはやめた方がいいと思います。
 ずいぶん辛辣なことを書いてしまいましたが、まだまだお伝えしたいことがたくさんあります。機会がありましたら、そのときに書かせていただきたいと思います。
★ストレスをためるのがなにしろ一番健康に悪い!
 ストレス解消のため、たまには、おいしいお酒で大いに酔っぱらおう!大いに飲もう!大いに騒ごう!たまにはいいじゃないですか。          
9. 日本酒・・・わたしが思っていること
★本物の淡麗辛口というのはしっかりした味があります。
 ただ辛いばかりで味のないお酒が多すぎます。そういうお酒はコストや手間がかからず、蔵元さんにとってはありがたいお酒なのです。
★日本酒はお・い・し・い!です。
 学生のころ、コンパでイッキをやらされてつぶされたイヤな思い出があったり(私もそうでした)、よっぱらいのおじさんたちの息がくさいとかの先入観から日本酒を飲まず嫌いな方をたまにお目かけいたしますが、いい酒はいい!うまい!おいしい!旨酒一口飲めば、いっぺんで日本酒ファンになります。このコラムをお読みになって下さっている貴兄。とくに若い方、女性の皆様にご自分が「こいつはうまいなあ」というお酒を薦めて下さい。きっと「ええ!これが日本酒?」「あら!おいしい」といって喜んでくださると思います。
★お酒の飲み方は自由です。
 お酒は嗜好品です。その人その人いろいろな飲み方があってもいいんです。飲む人が飲み方を決めればいいんです。
★何人かで飲んだとき話題になるような、そのお酒がきっかけで場が和み、会話が弾み、楽しさを導いてくれるようなお酒が最高ですね。
 そんな「幸せのお酒」を皆様に感謝をこめてご提供することがわたしの仕事であり、夢です。「佳き酒良き友」いいお酒にはいい人が集まります。皆様の一助となれたら、それこそ酒屋冥利に尽きます。

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